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アントファガスタの優しき人々 [チリ]

10/23|42日目
9時起床。シャワーが水しか出ないので昨日一緒にお酒を飲んだ面長の兄ちゃんを起こして火を入れてもらう。そこへ宿のおばあちゃんが登場。「あんた、昨日電気つけたまま寝たでしょ」と怒られる。日本とは違ってチリでは山を越えて電気を引っ張ってくるのよ、とクドクド怒られる。パスポート番号を教えてちょうだい、と言うので昨日伝えましたよと言うと「あらまぁ」といった様子。言い方はきつい感じだけれども雰囲気が何ともカワイイおばあちゃん。昨晩べろべろに酔っ払った兄ちゃんそっくりのアホな小5も登場。カンフーしながら近づいてくる。空手はやったことないよと言っても信じてくれない。
町に出て今晩8時のバスチケットを購入。宿に戻り荷物をまとめてサンティアゴへ向かう旨伝えると、おばあちゃんは一転さみしそうな表情を浮かべ、「ありがとう」と日本語で言うのだ。カワイイじゃないか!

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宿に荷物を預かってもらって町へ。目抜き通りを行き、コロン広場 Plaza Colón を抜け海岸沿いを歩く。久しぶりの海、しかも太平洋だ。後ろを振り向けば褐色の台地が迫り出すように町の背後を覆っている。アントファガスタの通りはどの通りも台地から太平洋への急勾配な坂道が見える。

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アントファガスタ Antofagasta は何もないただの中継地点という気分でいたのだけれど観光バスの車体や町のそこここにへんてこりんな風景の絵が描かれていることに気付く。ガイドブックを見るとラ・ポルターダ La Portada 奇岩群とある。時間はたっぷりあるので今日はそこへ向かうことにしよう。

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市場のそばの土産物屋の軒先にはカラスならぬペリカンが4羽座している。所変われば品変わる。小学生サイズのペリカンに見下ろされるとなかなかの迫力。市場は大きな倉庫の内部に迷路のような小道を張り巡らせている。店を冷やかしたあと魚料理で昼食。ボリューム満点のランチは今までの南米各国の味わいと異なり、アジアっぽい味付けで美味。店を出てすぐに便意を催し、そばのネットカフェの便所へ駆け込む。思えば実に久しぶりの大便。下痢止めをフリスクのように摂取し続けた結果、ここんとこすっかり便秘になっていたけれど、魚料理偉大なり。

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ネットカフェでブログを投稿し、ニコレッタからのメールに返事を書く。サンティアゴからイースター島へ飛ぶつもりでいたんだけれど、ウシュアイアのオススメポイントや宿についての丁寧なお便りをもらい、すっかり気分はパタゴニア。単純ですな。

ラ・ポルターダ奇岩群へはタクシーで行くべし、とあるが往復で15,000チリペソとのこと。高いな〜、値段聞いて日和ってしまって、すぐの信号でUターン。コロン広場へ戻って市バスを探す。バスの乗務員や道行く人に尋ねても要領を得ない回答ばかりで困り果てる。バスを待つ人々の眼差しが好奇なものへと変わり始めた頃、ひとりのおばちゃんが進み出てバス停まで連れて行ってくれるという。
連れの年配女性にひと言ふた言話しかけると年配女性をその場に残し、肩を並べて5分ほど歩く。けっこう歩くなぁ、ダイジョブかい?なんて内心思っていると、そこはバス停とは名ばかり、ボロボロの操車場にこれまたボロボロの白いワゴンが止まっている。フロントガラスにも車体にも何も記されていない。これはわかんないわなぁ。

おばちゃんは運転手を捕まえて、「彼をラ・ポルターダで降ろして頂戴」と言付けてくれる。おばちゃんにお礼を言い、チップを渡そうとするのですが断られる。「アディオス、グラシアス」おばちゃんにお礼を言い、別れる。窓口で1,000チリペソを渡すが窓口の係員は紙幣を前の客の運賃だと思ってレジに入れてしまい、もう一度払えと言う。「あれ?往復という意味なのか?」とまごついているとすかさずさっきのおばちゃんが背後から現れて「タビェン?」と助けてくれる。切符も無事購入し、安心しておばちゃんもその場を離れてゆく。優しい。

ボロボロのバスに乗り込み出発を待っているとジワジワと込み上げてくるものが。おばちゃんの優しさが琴線に触れたとはこのことか。ジワーっと涙腺が滲んでくる。連れの女性をその場で待たせてバス停まで連れて来てくれる軽やかな親切心。このことがきっかけで俺は殊、道に迷った外国人には気持ち悪いほど親切だ。その時はバスに揺られながら「将来は外国人向けの宿を営みたい!」とさえ思っていた。単純だね。

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町の中心部から40分。降りたバス停には帰りのバス時間なんて掲載されていない。見た目もバスらしくないし見つけられるかな、と心配になるが「行きは良い良い」でとりあえず忘れる。あとで後悔するのですが。
ラ・ポルターダはバス停から1km歩くとガイドブックにあるので町中をくねくね歩くのかな、と思っていた。そうではなくて砂漠の中を海に向かって真っ直ぐに1km歩くのです。てくてくと歩き、振り向くと後方には砂漠と台地の壮観な風景。少し歩いては振り返り、その景色を脳髄に焼き付ける。実際に歩くことで記憶はより一層強まるのだ。

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25分ほどでラ・ポルターダに到着。んー、なんかで見たことあるぞ。そんな既視感の漂うラ・ポルターダ奇岩群。ここにあったんだー、と遭遇を喜ぶ。帰りのバスの時間を考えると45分ほどでこの場を出発しないと行けない。ということでひたすらあの奇岩に近づくことにする。

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人ひとりいない弓なりの砂浜や岩肌をいくつか越えると、奇岩は風の抜け道を胴体部に抱えて数10メートル先に見える。それは鳥が羽を休めるには格好の場所となっており、糞の臭いと潮の香りが混ざり合って鼻腔を微かに刺激する。奇岩を視界の片隅に、波と戯れて過ごす。そろそろ戻る時間だ。

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砂浜を戻り、野良犬を茶化して、幹線道路へ真っ直ぐ延びる砂が覆う道を折り返す。数台の車が通り過ぎ、「乗せてって欲しいな」と思う。25分ほど歩きバス停へ。このときはまだのんびりとしていて木製の電信柱に立ち小便などしている。乾燥した空気が立ち小便の水気をあっという間に拭い去る。
バスと思しきワゴン車は通らない。バスの時間も掲載されていない。10分15分が過ぎ、近隣の建物の番犬が仕切りに吠え続ける。いよいよまずいぞ。
さて!仕方ない。ここはヒッチハイクですな。乗せてくれそうな車を遠くに見つけると右手を挙げ、両手を挙げ、存在感をアピールする。車は時速100kmでバンバン通り過ぎてゆく。長距離バスの時間を考えると相当にやばい。ツアー会社とおぼしきバンが通ると観光客が目線だけくれて颯爽と過ぎ去ってゆく。惨めだ。30分ほど過ぎる頃にはすべての車に手を挙げる始末。脇道からやってきたトラックをやっとこさ捕まえて荷台に乗り込む。このときの安堵感と言ったらない。まるでドロンズだ。心底ホッとしたけれどこんな気持ちは味わうものじゃない。今度する旅はもっと周到で浮ついた感じにしたいと心に思いを刻む。

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町の外れにある市バスの車庫で降ろしてもらい、トラックのおっちゃんにお礼を言う。ムチシマグラシアス。走り出した市バスに飛び乗り、町の中心へ。この市バスは完全な市民の足となっており、町の中心へ2ブロック進んでは左折して台地を上り、また1ブロック進んでは海側に坂道を下る。運転手さんの奥さんと2人の男の子が助手席に座り、末っ子が覚束ない手で乗客と小銭のやり取りをしている。そんなのどかな光景の中、自分は運転手さんのすぐ真後ろに座り、ことあるごとに間に合うかを尋ねては有言のプレッシャーをかけ続ける。勝手な話ではありますが。勝手な話なので運転手さんはノンビリしたものだ。通路を挟んだ横の席のお爺さんが微笑んでいる。
7時50分。オレンジ色の夕日に広場全体が染まる頃到着。運転手さんにお礼を言い、横のお爺さんに微笑むと片目を瞑ってみせる。宿まで本気で走り荷物をピックアップ。中庭でみんな縄跳びしてる。ほのぼの。宿のおばあちゃんにお礼を言うと日本語で「ありがとう」と言ってくれる。チャオ!

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8時を少しまわった頃にバス発着所に到着。狭い発着所に大型バスが4台ひしめいている。自分の乗るバスを見つけてひと安心。18時間かけてチリの首都サンティアゴに向かう。

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