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ブラジルの治安について/チャオ、ブラジル! [ブラジル]

10/17|36日目
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7時起床。食堂で日記を付けながら朝ごはん。少しすると宿のオーナーが現れて「青の洞窟はどうだった?」と声をかけてくる。昨日注意したことを気にかけてくれているのか、殊に優しい感じ。
日本のことやお互いの話をなんとなく話すうち、オーナーもテーブルの向こう側に腰をかける。初めて出会ったときに妙に凄みがあるなぁと感じたオーナーはブラジルの治安についての話題になったときにこんな話を始める。

ブラジルが危険な国だというのは間違っている、とまず前置きする。オーナーは観光業従事者としてブラジルのパブリックイメージにひとこともの申したいご様子。
オーナーはホテルを購入する前、サン・パウロでちょっと危険な仕事をしていた。違法行為という意味で危険なのではなく強盗に狙われやすいという意味で危険だったと言う。人のお金をたくさん預かる仕事だ。ハッキリとは言わなかったけどノミ屋行為かもしれない。
収入は良かったが精神的なストレスがひどかったという。1年に2度車を盗まれ、生涯で5度バイクを盗まれ、銃をこめかみに突きつけられたことが1回、口内に銃口を入れられたことが1度あるという。彼女の家にバイクで遊びに行き、バイクを止めて、メットを脱いだ途端にこめかみに銃を突きつけられる。「バイクを持っていっていいか?」と強盗に尋ねられ、「いいよ」とうなずく、オーナーはそういった状況を飄々と演じてみせてくれた。「口内にこういう風に銃口を入れられたんだよ」と淡々と話す人に初めて会った。
お金を持っていることを知られているのが危険だった。ボニートに来て、売りに出ていたホテルを購入。貯金はあった。ホテル経営を一から勉強したのが1年半前。客商売だから客入りの難しいシーズンもあるけれど当時の仕事に比べたら精神的に格段に楽だという。ここボニートではバイクに鍵をかけない、なぜなら皆が知り合いだし、例え、よそ者に盗まれても皆が教えてくれる。危険なのはサン・パウロとリオの一部分だけなんだと強調する。
トシヤ、ブラジルで危険なことはあったかい?と聞いてくる。なかった。昨日の恐怖のモトタクシーぐらいか。つまりブラジルで犯罪になるのはお金の問題だけ。貧富の激しい大都市で、お金を確実に持っていると知られている住民にだけ危険が及ぶ。普通の観光客、しかもトシヤを見て強盗しようと思うヤツはまずいないよというのである。

もう9時だ。たっぷり話したね。10時のバスでボニートを出発する。確かにオーナーの言う通りだ。丸々1ヶ月滞在したブラジルを今日出国する。思い浮かぶのは様々な土地でお世話になった人々の豊かな笑顔。渡航前に一番心配していたことは何だったっけ?部屋に戻り荷物をまとめてロビーへ。オーナーと握手をして、宿を出る。
バスに乗り1時間かけてジョアディンへ。そこからバスを乗り換えて国境の町ポンタポラン Ponte Porã へ向かうのだが待ち時間が3時間半もあるよ。

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ジョアディン Jordim 。本当に何もない田舎町。道が広くて空が高く、女学生がケラケラと笑い、壁に直接塗り付けられた鮮やかなペンキが目に気持ち良い。
フラフラと歩き回る。住宅の壁には贔屓のフットボールチームのフラッグが描かれ、強い日差しを遮るために突き出した庇の下には必ずと言っていいほど使い古したビリヤード台が鎮座している。時にはハンモックがかけられ、生涯日焼けし続けたオヤジが横になったまま迷惑そうにチラリと目だけを動かす。番犬みたいだ。
いい家だな〜、と思う。オレこんな家に住みたい。

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軽食屋で昼食を取る。最後のX-Saladaだ。そしてブラウマ。ビールでほろ酔いになり、2時過ぎロドビアリオに戻る。キオスクの前でガキンチョが地団駄を踏み、バス停ではお母さんが赤ん坊におっぱいをあげている。おもちゃを周りの人に拾ってもらっては投げてしまう幼児。2時半、バスに乗り込む。バスの狭い座席に無理矢理、体を畳み込む。

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西日。国境に向かってゆく。日が落ちてゆく。パラパラと雨が降る。最近はバスに乗れば感傷的な気分。昨日一昨日と旅程を考える中でブラジルに居続けるプランもあったのですが何事も腹八分目が一番。心地よさに甘えちゃうとこれまでのブラジルの印象も変わってしまいそうなので。昨日ジョゼに相談したらパラグアイを抜けアルゼンチンに入国するまで移動し続けろと言われた。遠い目でチリは素晴らしいよと言う。なので言う通りにする。19時過ぎ、ポンタポランに到着。

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時差+1時間で20時。女性の荷物を運んであげる。向こうは運ぶのが当然という顔をしている。そこが良いネ!ロドビアリオの正面玄関からタクシーを頼む。この町は国境線の役割を果たす道路から双方に40メートルを自由に行き来できる。ブラジル側の町はポンタポラン。パラグアイ側の町はペドロ・ファン・カバイェロ Pedro Juan Caballero 。タクシーの運ちゃんが双方のイミグレーションを定額で廻ってくれるのである。ハンコを押してもらったらパラグアイ側のバスターミナルまで連れて行ってくれる。
そういった国境越えの方法は一切知らなかった、越えてみてわかる。陽気なブラジル人の運ちゃんに連れられ、あっちこっちそっちこっち。パラグアイ側のイミグレーションで「あんた、ブラジル側のハンコまだもらってないじゃないの!、出直しといで」ババァ!!振り返ると運ちゃんがケケケと笑っている。「トシヤ、ここが国境線と町の中心だ」とチッポケな石碑をタクシーでクル〜リ一周。あぁ〜なんか疾走感があるなぁ。アドレナリンが出ている。オモシロカッタナァ、ブラジル。入国審査を終え、バスターミナルへ。途端に町の雰囲気が変わり、ガタガタの舗装になる。パラグアイだ。運ちゃんに礼を言い、握手する。「チャオ、ブラズィゥ!」運ちゃんは驚いた顔をして、そのあとうれしそうに笑う。

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さっそくバスチケットを購入。23時45分発で明朝着のバスだ。25ヘアイス也、安い!今までの運賃の感覚だと100ヘアイスぐらいしそうなものだけれど、さっきのタクシー代より安い。お釣りはシワクチャで穴の空いたボロボロな紙幣。切符売り場の中にリュックを預けようとお邪魔するとゴキブリがウロウロ。
荷物を預け、歩いてすぐのメシ屋に入る。家族経営の素朴な料理屋。ミラネーザ Milanesa を頼む。客は自分も含めて2名しかいないけれど、店の子供がわらわらと5人もいてにぎやかだ。皆テレビでやっている「デスペラード」に夢中だ。でも突然現れた東洋人も気になるようで代わる代わる「どこから来たの?」とか読んでる本を見せてよと声をかけてくる。かわいい子供ら。
店主のオトウチャンが向かいに座り話しかけてくる。名前はロランドという。年齢は1コ下だけれど疎らに無精髭を生やし、微かに諦観が漂っている。そうなんだ。わかったつもりはないけど、やはりブラジルから来ると、この国は貧しいんだなとしみじみ思う。経済的に貧しいという意味。ただ子供たちはにぎやかで好奇心が強く、店の雰囲気も家庭的でとても良い。
オバサン(年齢的にオトウチャンのオカアチャンって感じなのでオトウチャンは実はオニイチャンか?)も現れ、楽しく会話が始まる。子供らは大人の会話が始まった、とまたテレビに戻る。唯一、女の子だけ興味深げにガイドブックを読んでいる。名前を聞くと"ル"という。8歳ぐらいで「北の国から」で言うところの蛍みたいな子で可愛らしい。パラグアイの公用語であるグアラニー語を教えてよと言うとオバサンもロランドも嬉しそうだ。"ル"はスペルがわからなくて、ひとつ上のオニイチャンに助けを求める。押し黙っていたもう一人のブラジル人のお客さんも加わってグアラニー語の即席勉強会が始まる。閉店時間を少し過ぎ、オバサンが店のシャッターを下ろす。そのあとも少しばかり店内にお邪魔し、楽しく話す。いい店だなぁと思う。

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バスターミナルに戻ると警官が声をかけてくる。良い気分で2人写真に収まる。すると写真を撮ったタクシーのおっちゃんが「写真を撮ったのだから警官とオレに1本ずつビールをおごれ」と言う。言われてみて警官も良いアイデアだと思ったのかしつこくおごれおごれと言う。営業中の運転手と勤務中の警官がおごれおごれ言うのは滑稽である。ビールをおごる話はシカトして、野外のタクシー乗り場におもむろに備え付けてあるテレビでNHKを3人で眺める。これも滑稽である。
無線で呼び出され、タクシーの運ちゃんが去ったあとも警官がおごれおごれしつこいのでちょっと離れた商店でビールを買い、2人して飲む。警官の名前はルイスという、25歳。「少し先に日本人移民会館があるよ」とルイスが言う。「オレの友達は日本に出稼ぎに行っている、オレを日本で働けるようにしてくれ」と言い、オレのノートに真剣な顔つきで何かを書いている。「私はお金を稼ぐために日本に行きたい、ナショナルパラグアイ警察」とスペイン語で書き、携帯電話番号と名前を記している。
「パラグアイでは空き缶もお金になるんだよ」そう言うとルイスは空き缶を道端に捨てる。空き缶の跳ねる音があたりに響く。「朝には誰かが拾ってお金に換えているよ」とルイスは笑う。
見回りの時間なのか、ルイスと別れる。23時45分、ちょうどバスの時間だ。アスンシオン行きのバスの座席に座ると泥のように眠る。

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