旅のテーマ [ブラジル]

9/26｜15日目
10時起床。昨晩洗濯した大量の衣類も一晩でケッコー乾いている。南国ですな。
ちなみに旅での洗濯は原則手洗いなのですが宿ごとに洗面台の大きさも使い勝手も異なるので都度新しい洗濯手段を把握、実践しなければならない。この宿は洗面鉢が小さい上に体力的にも疲れていたのでタイル張りのチッポケなシャワールームに洗濯物をばら撒き、体を洗いながら足踏みする手段を選択。
洗濯機って偉大だね。結局2時間以上かかった。
そのタイル床はお世辞にも清潔とはいえない代物で自分の洗濯物で掃除してあげようという心意気がないと出来ない。その心意気はなかったが判断能力が鈍っていたので出来た。

昼前にアドウフォ・リスボア市場 Mercado Municipal Adolpho Lisboa へ向かう。ものすごい暑さでちょっと日陰があるとプー太郎や子どもが死んだように寝ている。市場や港はいろんな意味で活気があって悪そうなやつがちょっかい出してきたり、この高架下はちょっと行けないなみたいな雰囲気もある。土産物を探したり、ロール上に丸めて売られているピラルクなんかを眺めたりとフラフラうろつく。

14時に宿へ戻り、ツアー会社のアンドレが現れるのを待つ。明日乗船予定のフェリーにハンモックを括りつけてくれるとのこと。場所取りが烈しいのだそうだ。が、しかしアンドレは現れず結局部屋で夕方まで寝ちゃう。アンドレが現れるのを待つのではなくアンドレのオフィスにハンモックを持ってゆくのが正解。英語は難しいよ。もう夕方なので閉館時間があるような観光は諦め、ひたすら歩きまくる。

夜。広場のメシ屋でシーサラダ XXX Salada とビールで夕飯。シーサラダは簡単に言っちゃえばボリューム満点のチーズレタスバーガーのこと。ブラジル滞在中はアホほど食べた。
屋根付きのオープンカフェのようなメシ屋は様々なタイプの売り子がテーブルの間を行き交っている。海賊版DVDを売る兄ちゃん、パチモンの腕時計やサングラスを売る爺さん、ピーナッツを売る子どもなどなど。食事をする地元の人たちは「そんなしょうもないものを！」みたいなのをうれしそうに手に取って買い物を楽しんでいる。
小学校低学年ぐらいのシール売りの女の子が自分のすぐ真横の柱にもたれて店内のテレビアニメに見入っている。
テーブルを廻る人の中には、片目が潰れ片足の膝からつま先が木の根のように萎んだド迫力の兄ちゃんなんかもいて、無言の圧力と共に向かいの席に座り、メッセージの書かれた紙ペラと小銭の数枚入った紙コップを出してきたりする。睨みつけてもこちらにコインを出す素振りがないと隣りの席へ移る感じ。でも2回3回と廻ってくる。

ビールも3本目のところで勢い良く後頭部を叩いてくるものがいる。振り向くと店のメニューで顔を隠した中国系メキシカンのリーさんである。隣りにはジョルジも。今日ロッジから街に戻ってきたそうで、ジョルジとこれからメシを食べるところだと言う。席をご一緒させてもらって楽しく飲む。
リーさんはメキシコはベラクルスのチャイニーズレストランのオーナー。テリー伊藤ばりのバイタリティ、エネルギッシュなコミュニケーションから察するに結構な実力者だと思う。オレの拙い英語に顔をしかめ、ジョルジのポルトガル語でのフォローも入ってやっとこさ質問を理解すると「なんだ、時間がかかるわりにそんな質問か！」みたいな悪態を付く。でも自分の店の名前の由来や釣りの話などを面白おかしく教えてくれる。
ジョルジはアマゾンとは遠く離れたところに自宅があり、今はあのフェリーボートに寝泊りしているとのこと。出稼ぎに近いイメージだろう。観光客同士の浮かれた会話を聞く時のジョルジの何とも言えない表情であったり、マンツーで話す時の繊細で控えめな語り口が印象に残る。会社を辞めて骨休みの旅をしている自分にとって「サービスとお金」、「海外旅行ができる幸せとその仕組み」は常に忘れられない、時間があると頭を擡げてくる考察テーマになっていた。ジョルジの眼差しはその思考の帰着点のひとつになる。
日本から12枚の浮世絵絵葉書を持参してきたのでジョルジとリーさんに一枚ずつ気に入ったものをプレゼントする。「メキシコ訪問時にはお店に遊びに行きますよ」みたいな感じで。リーさんはその絵葉書をジョルジに渡す。「フェリーボートのキャプテンにあげなよ」みたいな感じで。
リーさんと別れる。リーさんは「女の子を捜してくる！！」と大声で宣言して大通りへと去ってゆく。カッケーなー。ジョルジと顔を見合わせ、軽い感じで別れる。チャオ、ジョルジ